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2010年創業の新しい生産者であるGaresioはこう言う、「醸造は、ワインの品種特性の純粋さを保存すべく最善の技術を適用し、極端な方向にも頑迷な保守主義にも傾かずに伝統的な方法で進められる」。現代的ワインに必須の要件とは、風味のクリーンさであり、それがもたらす品種とテロワールの正確な描写力である。だから「我々にとってのワインは絶対的に最も正統的なテロワールの表現であるべきだ。それは決して気ままでも厳かであってもならず、常に魅惑的で親しみやすくなければならない」。

いまだ多くの消費者にとってのバローロ認識が、バローロ=茶褐色で酸化風味の渋くて酸っぱい、という” スタイルのワイン” であることが問題だ。スタイルのワインを造るのは簡単だ。実際、スタイル的な正誤でワインを判断する悪習が一般化している現在においては、そういったワインが氾濫している。本質の表現ではなく表層のシュミレーションを目指したワインのことを工業的ワインと呼ぶ。正しく「伝統的」なワインとは、本質の探究によってのみ生まれる。Garesioが社是とするのは、現代におけるバローロの本質表現をいかに消費者にとって理解しやすい「魅惑的」な形で行うか、なのである。

では「絶対的に最も正統的なテロワールの表現」とは何か。Geresioのワインを鑑賞する時に徹底して意識すべき対象はそこにある。だから我々は、Geresioのワインを飲む前に、バローロのテロワールに関する基本的な事柄を学ばねばならない。

バローロ生産地域の地質年代は第三紀中新世であり、当時は海水位が高く、このエリアは海の底だった。海底に堆積した石灰、砂、シルト、粘土が固結し、それが隆起した土地が今の畑である。中新世の中にさらに細かい分類があり、バローロの地質は、古い順からセッラヴァリアン(1382万年前から1163万年前)、トルトニアン(1163万年前から725万年前)、メッシニアン(725万年前から533万年前)の三時代に分かれる。岩石的には、セッラヴィリアンは粘土や石灰分の多い泥灰岩(プロやワインファンの間でレキィオ層と呼ばれるもの)。トルトニアンはまず二つに分かれ、より古い時代のディアーノ砂岩と新しい時代のサンタガタ化石泥灰岩である。さらにサンタガタ化石泥灰岩は、シルト質(これが多い)、粘土質、砂質の三つに分かれる。メッシニアンには石膏を含むヴェーナ・デル・ジェッソ層と砂が多く石灰の少ないカッサーノ・スピノーラ層がある。バローロを味わうとは、これらの土地の個性をワインの中に見出し、それがどれだけ正しく、また美しく、また美味しく表現されているのかを分析、鑑賞、評価するということである。

どの土地からのバローロにもそれぞれのよさがある。初心者が陥りがちな過ちは、セッラヴィリアンの味をイメージしながらカッサーノ・スピノーラを飲んで「軽いからダメだ」と考えたり、サンタガタのバローロの経験だけをもとにセッラヴィリアンを飲んで「ごりごりして渋い」と思うことである。あるべき味が分からなければワインを飲んでも誤解するだけだ。

Garesioの畑はセッラルンガ・ダルバ村北部にある。そこはセッラルンガ・ダルバ村南部を特徴づけるセッラヴァリアン泥灰岩と、バローロ村集落から北東部にかけての基本地質であるトルトニアンのシルト質サンタガタ化石泥灰岩という、異なる二つの地質の接点である。どちらも石灰質が強いため、その特徴である引き締まった酸や緊密なミネラル感や表現力に富んだ濃密な果実香を共通して備える。バローロの基本地質とは何か、とプロに問えば、歴史的な背景や該当する面積の広さから考えても、この両者を挙げるだろう。

セッラヴァリアン泥灰岩のワインは時に傲岸不遜と呼べるほど堂々とした性格で、ごりっとした硬質なタンニンと口に入れてから下方向に広がる粘性を感じる。シルト質サンタガタ化石泥灰岩のワインはより親しみやすく、味わいの要素のあいだに空隙があり、タンニンは強いものの暴力性はなく、どろっと落ちるというよりふわっと広がるような流れ方をする。

それを踏まえた上でGaresioのバローロ・セッラルンガを飲む。硬軟・陰陽を両立した味わい。まさにこれはバローロを代表する二つの地質の稀有な合体であり、理念形的バローロであると理解できる。そしてランゲ・ネッビオーロ。これは凡百のランゲ・ネッビオーロのようなシンプルな砂質や粘土質の畑ではなく、クリュであるチェレッタの斜面下、つまりセッラルンガ・ダルバならではのセッラヴァリアン泥灰岩畑からのワインであり、その堅牢な個性を内包しつつ、マセラシオン期間、樽熟成期間とも短いために若いうちから楽しめる、最上の意味でバローロのセカンドワイン的な作品。両者ともに、「絶対的に最も正統的なテロワールの表現」にして「魅惑的で親しみやすい」。完全な言行一致であり、Garesioがいかに優れた生産者であるかを証明する。